2019/09/14

何もない土曜日

休日に仕事をしなくなって五年目になる。
つまりそれは、演劇部の顧問をしなくなって、ということだ。
高校教員の仕事のうち、労力の半分は部活運営によるものだった、ということが今となってはよく分かる。

娘がウチに来てくれたのが、ほぼ五年前。
12月に来てくれて、それから1月、2月、3月。この間、これまで通りの仕事量で、かつ子育てをしていたので、だいぶ無茶な生活だった。
三か月ちょっとの期間ではあったが、私が子育てできない分は、全て妻が背負ってくれた。

行政職に異動になって、部活動が無い分、そして生徒相手の仕事でなくなった分、子育てができるようになったのは、本当に僥倖だった。
高校の教員をしながら子育てをしなければならなかったとしたら、私たち一家はおそらく、保留なく崩壊していただろう。

話がそれた。
休日に仕事をしない、という話だった。
仕事をしないで、いったい何をしているのかといえば、もちろん子育てだ。

今朝は6時過ぎに起きた。
娘が寝転がったまま、こちらを見ている。
今のところ、娘と一緒に寝るのは私の役割なので、朝の世話も私がすることになっている。
起きるか、と聞くと、何か見たい、と言う。
携帯で何か動画を見せる。
ユーチューブのリコメンドに、スライムの作成動画が示されている。それを見たいと言う。
8分程度の動画だったので、二人で小さな画面でそれを見る。
赤い血糊のようなスライムを作り、ゴム手袋に詰めて、爪の部分を切ってホラーな感じの絵を撮る、という趣向のものだった。
この人の動画はいつも、いきあたりばったりにやっているように見える。計算づくなのだろうとは思うけど、ぼんやり見ている分にはちょうど良い緩さだ。

見終えて、朝食の準備をする。
妻が前夜のうちに準備してくれているので、私はレンジで温めてサーブするだけ。

朝ご飯を食べ終えて大きなレゴブロック(デュプロシリーズ)で遊んでいると、妻が起きてきて、出勤の準備を始める。彼女は勤務日なのだ。
デュプロではミッキーマウスがワニに乗って暴れている。台車の上の象に乗った男の子がそれを見ている。

妻を見送ったあと、風船で遊びたいというので、赤い風船を膨らませて、二人で団扇でバドミントンのようなことをする。
4歳児というのは身体能力が日進月歩なので、どんどん出来ることが増えていく。

ひとしきり打ち合ったので、犬の散歩に出かけることにする。
名目は犬の散歩だが、実際には近所の公園にブランコに乗りに行くのだ。
ブランコを押してもらうことに大きな幸せを感じているようなので、休日の朝は公園に行かないわけにいかない。犬にしてみればブランコの脇のわずかな日陰にじっとしているよりなく、暑いだけで迷惑だと思うのだが、特に嫌がる様子もない。
15分もブランコを押していると、満足したらしく、帰宅することになる。

その後、車に乗っておでかけ。
近くの子育て支援センターに行く、と言ってきかないので、行ってみる。
この支援センターは彼女が通っている保育園と同敷地内にあり、ほぼ毎日夕方行っている場所なのだ。どうして休日にまで行きたいと思うのか不明だが、行きたいのだろうから、連れていく。

先客は一組の父娘。年下の娘さんのようだ(後で聞いたら3歳児;2歳下だった)。母親同士であるならば会話するところなのだろうが、父親というのはなかなかコミュニケーションを取るところまでいかない。
私も子育ての現場では積極的にコミュニケーションを取ろうと思ってないので、何となく同じ場所で遊ばせている、という感じになる。
木製の線路を組んで電車を走らせたり、井形のブロックで鉄砲を作って戦争ごっこをしたり、大きな布製のサイコロを振って出た目で追いかけっこをしたり。
だんだんお客さんが増えてきて、混んでくる。
和室でお絵かきをしていると、前述の小さな女の子が一緒にお絵かきをしたいとやってくる。
お父さんと少し話をする気配になり、子育ての方が仕事より大変ですよね、ということで、一致する。
子育ては見通しをもって時間が進められない。子どもと同じように「今」を生きるしかない。それは大人にとっては、結構、大変なことだ。

支援センターを出たのが11時。
彼女は12時半にはお昼ご飯を食べ終えて、昼寝を始めるスケジュールになっている。
この時間からでは、ほとんど何もできない。

凧で遊びたい、との希望を昨晩から持っていたので、物置小屋に置いてある破れてしまった手作りの凧を見せ、新たに凧を調達しなければならないことを納得させ、セリアに連れていく。

セリアにはカラフルなカイトが置いてあったが、もちろん、隣の棚のおままごとセットが気になる。売り物をガチャガチャと取り出して、これは保育園にある、これも保育園にある、先生はここで買ったのか、など一人で納得している。
いろいろと欲しがるが、凧しか買わないよ、と説得しレジでお金を払わせ、出口に向かうと三文判タワーが目に入ったらしく、私の名前のハンコはどれだと尋ねる。
あいうえお順に並んでいることを説明し、ほら、この二つ並んでいるのが、私たちの名前だと説明する。漢字が読めるわけでもないので、微妙な顔でハンコを見ている。

お昼ご飯はオムライスがいいと言うので、マックスバリュに向かう。
途中見かけたセブンイレブンで、菓子パンを買いたいと言い出す。今からお昼ご飯だというのに、なぜ菓子パンが欲しいのか。
何度も説得するが、どうしても菓子パンを買うと言ってきかない。
買っても良いが、今は少ししか食べないこと、お昼ご飯は必ず全部食べることを約束して、セブンに入る。
パンケーキ(2枚入り)を選んだので、購入し、車の中で1枚だけ出して、半分だけ食べさせる。もう半分は私が食べる。しまった。思ったより甘い。ほっぺにメープルシロップのジェルが付くのでティッシュで拭く。

向かいのマックスバリュに入ると、プリンを作りたいというので、粉末のプリンの素を買う。牛乳で作るのと、お湯で作るのがあったので選ばせると、お湯で作る方が良いという。
チャーハンは向こうだ、と主張する彼女をなだめ、逆方向の冷凍ケースに向かう。ケースの中のチキンライスを見せると納得したらしい。どこかの店舗と勘違いしていたのだろう。チキンライスとプリンの素を購入して帰宅。

チキンライスを大皿に盛り、電子レンジに入れ、レンジのボタンダイヤル操作をさせ、スイッチを入れさせる。
器に卵を割らせ、箸を渡してかき混ぜさせる。
湯沸かしポットのスイッチを入れ、カラメルソースの粉を小鉢に入れさせ、計量カップで水を加え、スプーンでかき混ぜさせる。黒い色になるのが楽しい様子。こぼしたカラメルソースをティッシュで拭きとり、スプーンをくわえさせる。甘いと喜ぶ。
プリンの粉をボールに入れさせ、沸いたお湯を加えて、大きなスプーンでかき混ぜさせる。熱いからね、と三回注意する。
溶け切っていないのだが、私がかき混ぜようとすると嫌がるので、仕方ない、計量カップで量った冷たい牛乳を注ぐ。
まだダマが残っているようだが、ここからは時間勝負なのでどんぶりに移させて冷蔵庫に入れる。

レンジが鳴るので、熱い大皿を食卓に運ぶ。小さな器を選ばせて、チキンライスをこれに詰めて皿にひっくり返すように言い、スプーンを渡す。熱いからね、と一回注意する。

その間、先に割らせた卵をフライパンで薄焼きにする。
焼いていると、おとうさーん、ひっくりかえしたー、と声がする。
見に行くと上手くひっくり返せている様子。チキンライスも散らばっていない。器を持ち上げるといい感じでチキンライスが小山になっている。
焼きあがった薄焼き卵をチキンライスの上にかけて、ケチャップで顔を描く。

好きなものはあっという間に食べる。
隣で余ったチキンライスを食べていると、食べ終わった娘が机の上のセブンのパンケーキを見ている。半分食べるのだそうだ。まあいいや。私も残った半分を一緒に食べる。

食べ終わって皿を洗っている間に、歯を磨くように言う。
素直に歯を磨きだす。珍しい。

ここまでで12時半。
このあと、昼寝をさせて、3時に起こし、プリンを食べさせて、公園に行き、凧を上げ、風がなくて凧は上がらず、実家に行き、じいじばあばと遊ばせ、帰宅した妻から具合が悪いので二人で外食してくるようメールが届き、二人で回転ずしに行き、帰宅し、風呂に入れ、キーボードのデモ音楽で一緒に踊り、絵本を読み、寝かしつけ、そうこうしているうちに一日が終わる。

いつも通りの、何もない土曜日。

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