2019/09/19

やっさん

ウチの学校で18年間の長きにわたり、総合的な学習の時間で教授いただいた鈴木康之さんが亡くなられた。

学校の近くには八ツ面川という小さな川(農業用の用水路、といった風情の本当に小さな川だ)が流れていて、ここにはイバラトミヨという魚が住んでいる。
イバラトミヨは巣を作ることで知られる小さな魚なのだが、現在、絶滅危惧種になっている。

このイバラトミヨの体長測定を私たちの生徒は代々、総合的な学習の時間で行っており、「やっさん」こと鈴木康之さんは、その指導をしてくださっていたのだ。

私はたった一年半の付き合いしかなかったのだが、やっさんは本当にすごい人だった。
ラーメン屋の店主で、詩の同人誌を主宰していて、淡水魚の在野の研究者なのだ。
それで、熊みたいな体形で、砂嵐のようなザラザラ声で、いつも笑っているのだ。

ちょっと、一言では表せない。

フィールドワークの合間合間に聞いたところでは、早稲田の文学部を出て、地元に帰ってきたところ、幼少時に遊んだ八ツ面川を暗渠にして上に道路を通す、という計画を知って、反対運動をおこし、イバラトミヨの保護を訴え、コンクリ三面護岸にするという譲歩案をさらに蹴って、石積みの護岸として親水空間にするよう提案し、その後、小学生を対象にイバラトミヨを活用した自然教育、ふるさと教育を行ってきた、ということのようだった。
(詳細は不明。たぶん、そういうことなのじゃないかな、と推測した部分も多い)
それで、結局、どうしてラーメン屋なのか、というのは聞けないままになってしまった。

ウチの学校の今年の創立記念式典には、やっさんに来てもらって、詩の朗読会をしてもらった。吉野弘と宮澤賢治の誌を中心に朗読してもらったのだが、とても良かった。私は生徒から見えない所で泣き通しだった。

詩人で、環境活動家で、教育者で、ラーメン屋。
そして何より、偉そうなところが一つもない。

今年の4月に、実はガンなんだ、と聞いてから半年。
投薬と放射線による治療は大変な苦痛を伴うものだと聞いているが、生徒たちには全くそのそぶりを見せず、フィールドワークの指導をぎりぎりまでしてくださった。

8月の下旬に緊急入院なさって、それからは電話でしか話すことができなかったが、それでもまさか、こんなに早くとは思わなかった。

もっと、お話を聞きたかったです。
やっさん。

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